ノーベル賞を授賞した本庶佑先生が、インタビューで「世の中のことは嘘が多い。教科書が全て正しかったら、科学の進歩はない。」と話していました。
ちょうど「フェノール類の検出反応」の生徒実験をしていたので、教科書通りか確認してみたくなりました
教科書には、「フェノール類の薄い水溶液に塩化鉄FeCl3水溶液を加えると青紫~赤紫色を示す」(少々省略)とあります。
高校で勉強する主なフェノール類は、
フェノール
クレゾール(オルト、パラ、メタ)
サリチル酸
カテコール
レソルシノール
ヒドロキノン
1-ナフトール(αナフトール)
2-ナフトール(βナフトール)
ピクリン酸
でしょうか。
実際に手元にある薬品で確認してみました。
ベンジルアルコールはフェノール類ではありません。比較のため置いてみました。
純水を加えます。
わずかに溶けると教科書には書いてありますが、見たところは分離していたり、粉末状態のままだったり。
塩化鉄FeCl3を数滴加えてみます。
なんていうか、、、青紫~赤紫??とは言えない微妙なものがあります。
右端のベンジルアルコールだけは-OH基があってもベンゼン環に直接ついてないアルコールなので呈色しなくて正解です。
「ヒドロキノン」
白色の粉末状態。
カメラのタイムシフト連写より。塩化鉄FeCl3を加えた瞬間から数枚。
更に数滴
一瞬だけ青紫色っぽくになり、あとは黄色?緑?のような色に。
「ナフトール」
1-ナフトール(α-ナフトール)
2-ナフトール(β-ナフトール)
かなり古い薬品瓶であるので、本来の色かどうか怪しいです
しかも、、、水には溶けませんでしたので、アルコール(エタノール)を加えてみました。
塩化鉄FeCl3を加えてみます。
う~ん
1-ナフトールは、何となく赤紫??といえなくもないでしょうか。
薬品が古いのでしかたないのかな。
もう一度、教科書をよーく見てみると、、、
小さく欄外に「ピクリン酸などまれに呈色しないものもあり」というような記述がありました。
前にblogでクレゾールで酸化された試薬と新しい試薬では色の見え方が違うことを紹介しました。
わずかな濃度の違いで、紫色が黒っぽく見えてしまったり、、、ヒドロキノンのように一瞬しか呈色しないものなどあります。
他のblogサイトでもいろいろ調べてまとめていた方がいました。
教科書には簡単にキレイに見えるものだけが掲載されています。
生徒実験でも分かりやすいものだけ行っています。
何事にも例外があります。
そこを突き詰めたり、不思議だと思って研究していくと新な発見があって面白いのかなぁと、しみじみ本庶佑先生の言葉に納得してしまいました。
「高純度化学研究所」の公式blogの「鉄のカラフルな反応~鉄はカメレオン?七変化を見せる鉄」(大学教授 山崎友紀先生)に、以前blogで紹介したフェノール類の呈色反応の写真を提供しました。
専門的なサイトの公式blogですが、なるべく身近なモノを取り上げ、分かりやすく紹介しています(そうはいっても、、、少し難しい専門的なモノもありますが)興味ある方はぜひ