なんとなく実験しています

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日々のアウトプット、メモ帖、備忘録として

※正解は一つではないです。選択肢の一つとして参考にしていただければと。

無機化合物の同定実験

大学入学共通テストの二日目です。

共通テストは、今までの暗記型より思考力を試す試験と言われています。

 

高校理科の実験でも、今までのお料理教室のような実験から思考力を試す実験を目指していろいろ試行錯誤を重ねています。

すでに出来上がっている実験プリントは、実験準備だけすればいいのでラクです。手順も注意点もわかっているので、安心して実験授業ができます。

しかし、今までの実験は「AとBを混ぜてCを合成させる」観察実験や定性反応実験が多く、色の変化など動画でいくらでも見ることができるようになった現在、考えさせる実験授業にシフトしていきたいと悪戦苦闘中です。

 

ということで、昨年行った無機化学化合物の同定実験です。

無機化学分野では銅や銀、鉄、両性金属などの「定性反応実験」を行っていましたが、今年は休校もあって授業時間がありませんでした。また「金属陽イオンの系統分離」も行っていましたが、ろ過したり、加熱したりするので実験回数が減って実験操作に慣れていない生徒に指導するのは大変です。もっと簡単にできて、生徒に考えさせる実験はないかな?と、挑戦してみました。

 

「無機化合物の同定実験」

A~Eの溶液中の無機化合物を推定させるという実験です。

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予算もあるので薬品庫にある試薬を使い、簡単な操作だけで行いたいので火や扱いにくい硫化水素を使用しませんでした。

また、班によって異なる溶液にして、廃液も少なくなるようにマイクロスケール実験です。

 

陽イオン:Naイオン、Agイオン、Baイオン、Pbイオン、Znイオン、Feイオン(Ⅱ)、Alイオン、

陰イオン:CIイオン、NOイオン、SOイオン

 

試薬:希塩酸、希硫酸、希硝酸、NH3aq、NaOHaq、BaCl2aq、AgNO3aq、クロム酸カリウムaq、K3〔Fe(CN)6aq

 

上記の陽・陰イオンを含むA~Eの溶液中に、試薬を加えて化合物を推定してください、という実験です。

 

試験管を各班に10本ずつ配布し、足りなければ洗いながら実験します。

試薬を入れる順番も支持していないので、作戦を練って最小本数を考える班、とりあえず全部加えてみるという班、データを取りながら協力して推定、考えて化合物を同定していきます。

 

※参考までに、、、系統分離的に行うと・・・

希塩酸を5本に加えたら、Eに白色沈殿ができました。

そこから推察すると、Pbイオンか、Agイオンの溶液かな?と考えられます。

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クロム酸カリウムを加えて、Eの試験管が黄色になったらPbイオン、赤褐色になったらAgイオンになります。これは、、、Pbイオンのようです。

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そして、陰イオンもだいたい予想がついてきます。

鉛蓄電のところで勉強しますが、PbSOは白色沈殿という固体で、Pbは塩酸や硫酸に難溶と教科書に登場します。そうするとEの溶液は「Pb(NO2」かな?

硝酸銀を加えて変化がないことからPbClではないと証明してもいいかもしれません。

 

生徒の様子ですが、手順通りにやらされる実験ではないので、資料集や教科書とにらめっこしながら話合って実験していたので、考えさせる実験という点では成功かな。

 

陽イオンの系統分離を勉強しているグループは、セオリー通りに塩酸から始めますが・・・

グループによっては、水酸化ナトリウムを滴下するところから始め、変化をみて過剰に加えたり。

また面白いグループはK3〔Fe(CN)6aqをA~Eに加えて鉄イオンがあるか確認するところから始め、変化がなければ消去する方法を選択したり。

 

約1時間で陽イオンはほぼ確定できました。陰イオンまで確定させ、プリントをまとめて提出させるためにはあと30分ほど必要でしょうか。

前もって考えさせるか、陽イオンだけにする、本数を少なくしていたら、1時間で完結できていたかもしれません。

そして、想定外に間違えていた試薬は硫酸鉄(Ⅱ)です。淡緑色と学習しているため、0.1mol/Lで少量だと無色と見間違ってしまい、全く想定していない点から推定することは難しかったようです。

水酸化ナトリウムアンモニアも少量と多量で反応が違うことも理解していないと難しい点があり、時間がかかったと思われます。

 また、試験管の本数が決まっていたので、試験管ブラシを使いキレイに洗って純水で注がないと、洗い残しの試薬と反応してしまってすべてが塩化物になってしまったグループもありました。

 

いろいろ課題、改良点もあるので、コチラも常に試行錯誤中です。

 

参考までにA~Eの試薬です。校内の薬品庫にあるもので揃えてみました。(以下の7つの試薬からバランスよく5つを選択して配布)

0.01mol/L BaCl2 (塩酸で沈殿してしまうので、薄めに調整)

0.1mol/L AgNO Pb(NO) Al(NO)3 NaCl ZnSO4 FeSO 

 

銅イオン(青)三価鉄イオン(黄)は色でバレてしまうので、ぱっと見て無色にごまかせる感じで揃えてみました。